自炊代行の業態考察

では、ここからはハンドルも出しまして。

http://d.hatena.ne.jp/vid/20111223#c
において Sonir さんとのやり取りが白熱しております。
と言う事で、論点となる部分のみをここに取り出しておきます。
「私が考えている」抜き出しなので、抜けがあったらすいません。

Sonir 2013/09/30 20:02
>この場合は「店舗から複製される書籍を持ち出さない」場合は、「書籍の持ち主は店舗である」と言う判断になり、「法律上の利用者=店舗」と判断されます。よって、客が複製することは「利用者による複製」にならず、違法と判断されると考えられます。
(中略)
法律論として素直に読み解けば、自炊業者が用意した書籍を用いての自炊は違法とはならないと思いますが、さすがにそれでは拙いので何らかの法理を用いて禁止することになるかとは思います。

vid 2013/09/30 21:46
Sonir さん。
「他人のもの」でもというところで例に挙げられたものですが。
 
一つ目。「レンタルCD」ですが、『この形式を取る場合は問題にできない』とすでに書いています。
あくまでも「原本」も「複製機」も「店から持ち出した上で、使用者個人が複製」を行う場合には、私的複製となるという話です。
レンタルCDは(基本的に)使用者が店舗から持ち出して複製を行いますから、30条の範囲になります。
したがって、同様に「裁断した本」を「著作権者から貸与権の許諾を得た上で、消費者に貸与」し、「消費者が複製を行った場合」は「私的使用」に当たるでしょう。
 
私の文章を引用していますが、その中で重要なのは
>「店舗から複製される書籍を持ち出さない」場合
です。この場合『書籍の使用者は店舗』として判断される可能性が高いです。したがって問題になります。
『消費者が店舗から持ち出すかどうか』『店舗が複製機を店内で使用する用途として用意しているかどうか』というのが一つの判断基準だという話です。
そしてこの場合の「私的使用」というのは、あくまでも「店舗が私的利用のために複製」する場合になります。「消費者に提供」した場合は「私的複製」にはなりません。「消費者が複製」した場合も同様です。
 
(中略)
>法律論として素直に読み解けば、自炊業者が用意した書籍を用いての自炊は違法とはならないと思いますが、さすがにそれでは拙いので何らかの法理を用いて禁止することになるかとは思います。
 
法律論として素直に読み解いた場合
・自炊業者が『裁断書籍(貸与権許諾を著作権者より受けている事)』と『複製機』のレンタルを行う
場合のみ、「私的複製」として認められる、というのが、現状の法律だと考えられます。まぁ、これは「自炊業者」とは呼べませんが。

Sonir 2013/10/01 23:02
貸与権」の範囲外の私的複製は違法とお考えのようですが、そうではありません。
私的複製を無制限に認めてしまうと、著作権者の権利を著しく害することになるので、その均衡を図るために生まれた権利が「貸与権」です。
貸与権」の範囲内であれば、対価を求めたり貸与を認めないことによって私的複製をコントロールすることができますが、「貸与権」の範囲外の貸与には著作権者の権利は及ばないので、私的複製をコントロールすることが出来ないのです。
ですから、自炊業者が用意した書籍をその場で自炊することを違法とするためには、むしろ店舗から持ち出さなくても「貸与権」の範囲内にあるとする理論構成をとる必要があります。

vid 2013/10/02 12:48
>Sonir さん
貸与権」についての現行法の解釈を完全に間違えています。
 
>「貸与権」の範囲外の私的複製は違法とお考えのようですが、そうではありません。
>私的複製を無制限に認めてしまうと、著作権者の権利を著しく害することになるので、その均衡を図るために生まれた権利が「貸与権」です。
>「貸与権」の範囲内であれば、対価を求めたり貸与を認めないことによって私的複製をコントロールすることができますが、「貸与権」の範囲外の貸与には著作権者の権利は及ばないので、私的複製をコントロールすることが出来ないのです。
 
ここが完全に勘違いしています。
貸与権は、「原本を貸し出すことで利益を得る形態」と言うのが、著作権者にとって財産的不利につながることで生まれた権利形態です。
一方、私的複製の制限は、「個人が個人の利用形態内で複製する場合は零細な複製になるために、違法とするのは実態に合わない」ために作られた項目です。
貸与権」条文は「私的複製」条文とは全く関係ありません。
貸与権によって対価を得たり、貸与を認めないことが出来る」事は「私的複製」とはなんら関係ない話です。
 
そして、「貸与権と無関係の貸与」であろうと、「本の所有権」については著作権者の権利は『全く存在しない』ですが、「本の内容の著作権」については「著作権者の権利」の対象です。
 
貸与権とは「本の所有権」について、一時移転による使用を認めるなどの話です。図書館などとも絡む。
一方「私的複製」とは「本の内容」が対象です。
 
>ですから、自炊業者が用意した書籍をその場で自炊することを違法とするためには、むしろ店舗から持ち出さなくても「貸与権」の範囲内にあるとする理論構成をとる必要があります。
 
全く関係ありません。
むしろ「貸与権の範囲である」事は、逆に「違法ではなくなる可能性」を高くします。
所有権の一時移転により、「利用者本人の制御下による所有物の複製」と判断される可能性が出てくるからです。
(他要素で違法となる可能性を否定できないため、断定は出来ない)
 
「自炊業者が用意した書籍をその場で自炊する」と言うのは、「本の所有権について一時移転が行われていない」と言うことになります。
したがって、この場合は「貸与権」は一切関係なくなります。
これが現在の「漫画喫茶のように店舗の外に本を持ち出さない場合」の法解釈となっています。
 
そのために「自炊業者が所有する本を、*自炊業者の管理下で*第三者による複製が行われ、この複製を第三者に譲渡している」という法解釈となると考えられるわけです。
 
貸与権」による「所有権の(一時)移転」がある場合は「利用者による複製」と言う言い訳が成り立ちますが、
「所有権の委譲が無い」場合には「*業者管理下で*利用者による複製」と判断される可能性が高いと、私は考えています。
 
結果、今回の裁判判決文を判例として引きますが
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20131001115316.pdf
「複製主体」が「業者」と判断されると私は解釈しています。
よって、私的複製の範囲外で違法行為と司法判断されるであろうと推測しています。
 
「本と言う有体物の所有権」と「本の内容と言う無体物の著作権」とを混同しないように注意してください。
その上で「複製主体が誰と判断されうるか」と言う問題なのです。

Sonir 2013/10/03 02:12
著作権者側は「複製権」で対抗できないものについて「貸与権」での対抗を検討するのは当然であり、両者を切り離して考えるのはナンセンスです。
論点を整理しますね。
 
 
?私的複製の為の要件
 
二つあります。私的使用目的であることと、使用者が複製することです。(著作権法30条
ここでいう使用者とは「複製」を使用する人であって、著作権法では複製の元になるものについて何らかの権利を有していることまでは要求していません。
ですから、複製元の所有権は私的複製の要件になんら影響を与えません。
 
 
?貸与によって所有権は移転しない
 
物権変動としては、多くの場合占有権の移転が起こりますが、今回のような店外持ち出し禁止の場合は占有権の移転も起こりません。
(店外持ち出し禁止の場合、著作権法上の貸与にはあたらないとするのが文化庁の見解ですが、民法上では成立します)
したがって、
>「貸与権」による「所有権の(一時)移転」
という論点自体が成立しませんし、占有権を要件とするならば、泥棒でも正当な権利者となってしまいます。
 
 
?「複製主体」が「業者」と判断される場合について
 
ユーザー自らが自炊を行う来店型店舗では、通常の法解釈では業者が複製主体となる事はありませんが、カラオケ法理を適用した場合は自炊業者を複製主体と考えることは可能です。
しかしながら私としては、附則5条の2からカラオケ法理の適用は整合性が取れず、なじまないものと考えます。
これを違法としてしまうと、コンビニでコピー取るのも違法となりえますし、附則5条の2を置いた意味がなくなってしまいます。

問題となるのは「複製を行う主体」は誰か

改めて論点整理します。

「複製権」と「私的使用のための複製の権利制限」

自炊と呼称される作業と言うのは、電子書籍を作ることです。
これは「本の内容の複製を作成する」と言う行為になります。
したがって、著作権法21条の「複製権」が必要となります(1)
 
これに対し、個人が行う零細な複製であれば違法に問わないと言うのが、30条の権利制限になります。(2)

複製を伴わない「貸与」に伴う「貸与権

一方で今回問題となっている「貸与権(26条の3)」ですが、これは「複製を伴わない形での公衆への著作物の提供」の権利です。

Sonir 2013/10/01 23:02
貸与権」の範囲外の私的複製は違法とお考えのようですが、そうではありません。
私的複製を無制限に認めてしまうと、著作権者の権利を著しく害することになるので、その均衡を図るために生まれた権利が「貸与権」です。
貸与権」の範囲内であれば、対価を求めたり貸与を認めないことによって私的複製をコントロールすることができますが、「貸与権」の範囲外の貸与には著作権者の権利は及ばないので、私的複製をコントロールすることが出来ないのです。

Sonir 2013/10/03 02:12
著作権者側は「複製権」で対抗できないものについて「貸与権」での対抗を検討するのは当然であり、両者を切り離して考えるのはナンセンスです。

貸与権(26の3)』の特異性とは「複製を伴わない公衆への提供」であるため、『複製権(21)の権利制限(30)』とは全く独立した概念です。
私が『貸与権(26の3)』でもって考察対象としているのは、「複製原本の管理者(《複製主体》)は誰か?」が『30条』考察には必須となるため、《原本管理者》を法的に解釈すると誰になるかに持ち出しています。
 
貸与権(26の3)』の成立経緯ですが、「《業者》による【営利を伴う】貸しレコード(レンタルCD)」と言う形による『公衆への著作物の提供』により、著作物の売り上げ減少が置き、《著作権者》は著作物の販売利益を失ったと言う事実からです。
これは著作者に対して利益還元されることが「望ましい」ために、『貸与権(26の3)』が新設されました。
成立経緯では「貸与による販売減少」でしかなく、そこに『私的利用による複製(30)』の考慮はありません。
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1318549.htm
文部科学省の資料です。

同様に文部科学省の資料
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/020/06122108/002.htm
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/010/07101103/004/002.htm
『30条』はそもそも昭和45年の著作権法成立当初から存在し、*当時は私的な複製と言うのはとても零細なために*、閉鎖的な状況で複製されるのであれば「権利者に被害は及ばない」として入れられた条文です。
※1このような想定のために、「時代の変遷によって著作権者の利益を著しく害する場合には再検討が必要」と言う事で、『複製機器の公衆提示が違法(30-1-1)』となっています。
※2ただし、契約処理の体制が整っていないことをかんがみて、図画の複製機器は対象外になっています。(附則5条の2)
コンビニコピー機の問題は※2ですね。
 
重要なのは、『貸与権(26の3)』は『【営利を伴う】《業者》に対する「貸与」と言う形での公衆への著作物の提供』に対してかけられた《著作権者》の消尽しない権利である事です。
そして『貸与権(26の3)(《業者》が対象)』は『私的使用のための複製(30)(《利用者》が対象)』に対しての「コントロール能力」には一切影響*していません*。
ですので
(Sonir さんの引用ですが、論点整理のために編集を入れています)

  1. 貸与権」の範囲内であれば、対価を求めたり貸与を認めないことによって私的複製をコントロールすることができますが、
  2. 貸与権」の範囲外の貸与には著作権者の権利は及ばないので、私的複製をコントロールすることが出来ないのです。

これに対してですが、《業者》の貸与による公衆の提示であろうと、なかろうと、《利用者》の『私的使用のための複製(30)』のコントロールには全く関係しません。《利用者》の「複製(21,30)」は常にコントロールできないのです。
貸与権(26の3)』とは《業者》に対する制限であって、《利用者》の「複製(21,30)」には関係しない権利です。
 
私が論立てて居るのは自炊と言う「複製(21)」を行ったとき、その《複製を行った主体》が《業者=複製者》なのか《業者≠複製者》なのか、ここを論じています。ここを論じるために『貸与権(26の3)』が必要になってきています。
なぜならば、カラオケ・漫画喫茶(貸与による公衆への提供では無い)などと貸しレコード(レンタルCD)・貸し本(貸与による公衆への提供である)では、「複製(21)」が行われたときに法律上の《複製主体》が違ってきているからです。
 
《業者=複製者》の場合は『貸与権(26の3)』は全く関係なくなります。この場合『私的使用のための複製(30)』条件から外れるために『複製権(21)』での違法行為になります。
《業者≠複製者》の場合は原本を『貸与権(26の3)』に基き《利用者》に渡した後(所有権の一時移転)、《利用者=複製者》ですから『私的使用のための複製(30)』の条件が重要になります。この場合、『私的使用の条件(30)』を満たしていれば違法にはなりません。
 
私の論じている対象ですが。
「原本の所有権」のために『貸与権(26の3)』を論じているのではありません。
「複製を行った《主体》」のために「原本の所有者は誰か」を論じているのです。そのために『貸与権(26の3)』による所有権の一次移譲を論じているのです。
何故このような構成をとっているかは、カラオケ法理や漫画喫茶(店舗から持ち出さない公衆への著作物の提供と言う業務形態)を論じたときの構成を参考にしているからです。

Sonir さんの論点への反論

と言うところで、再び Sonir さんの意見への反論に戻ります。

私の論点としましては

Sonir 2013/09/30 20:02
>この場合は「店舗から複製される書籍を持ち出さない」場合は、「書籍の持ち主は店舗である」と言う判断になり、「法律上の利用者=店舗」と判断されます。よって、客が複製することは「利用者による複製」にならず、違法と判断されると考えられます。
(中略)
法律論として素直に読み解けば、自炊業者が用意した書籍を用いての自炊は違法とはならないと思いますが、さすがにそれでは拙いので何らかの法理を用いて禁止することになるかとは思います。

自炊業者が用意した書籍を<自炊業者が用意している店舗内で>自炊業者が用意している複製機器を用いて複製した場合は、違法になると言うのが私の持論です。
なぜならば、この場合の「複製(21)」行為の《主体》は《店舗業者=複製者》であると司法判断されうるからです。この場合、「どの著作物を複製するか」の判断や、「実際の複製行為」を行ったのが《利用者》だったとしても、それは《業者》の監督下で行われたと解釈される、と考えているからです。
この考え方の根幹は最高裁判所によるカラオケ法理(クラブキャッツアイ事件)の解釈です。
 
音楽著作権侵害差止等請求事件
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=52186&hanreiKbn=02 検索ページ
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319120549006120.pdf 判決文本文
カラオケ法理において重要なのは

《業者》が用意した著作物を《利用者》が利用しているのであり、これは《業者》による著作物利用と言える

と言う判断です。
「店舗から著作物を持ち出さない場合の自炊行為」もこれと全く同じ構図です。
ここに民法の占有権を持ち出しても意味はありません。この構図は「著作権法貸与権」は全く関係しないからです。
 
現実問題として考えた場合、「店舗に行く」事で「誰が複製行為を行ったか」に関係なく「客が複製物を手にする」以上、「店舗から著作物を持ち出さない自炊行為」を合法と言うのは、無理があります。
ダビング屋は、例え自分で操作しても違法と言うのがありますが
http://chosakuken.bunka.go.jp/naruhodo/answer.asp?Q_ID=0000390
本の場合は「自動複製装置」の関係で 30条1項1号を適用できない(附則5条の2)としても、やはり同様に違法とすべきでしょう。著作者の利益を「著しく」損なっていると考えられます。

Sonir 2013/10/01 23:02
ですから、自炊業者が用意した書籍をその場で自炊することを違法とするためには、むしろ店舗から持ち出さなくても「貸与権」の範囲内にあるとする理論構成をとる必要があります。

貸与権の範囲内=《業者》による「貸与」が《利用者》に行われた」のであれば、《利用者=複製者》となって『私的使用(30)』の対象となるため、「違法ではありません」。
しかし「自炊業者が用意した書籍をその場で自炊すること」は、「店舗から持ち出さない」ために「『貸与権(26の3)』の範囲外」です。これが現行法の解釈です。
したがって「その場で自炊すること」はカラオケ法理により《業者》が「著作物の所有者」(カラオケ機器)であり、電子複製作業は《業者=複製者(利用者が手足)》となり、「複製物(電子書籍)の《利用者》への提供」は『私的使用(30)』の範囲外となり、『複製権(21)』への「違法行為」と考えられます。
この時の違反者は《業者》です。《利用者》ではありません。

Sonir 2013/10/03 02:12
著作権者側は「複製権」で対抗できないものについて「貸与権」での対抗を検討するのは当然であり、両者を切り離して考えるのはナンセンスです。

そもそも自炊周りの話は『複製権(21)』の話なので、「『貸与権(26の3)』で対抗」と言うのが的外れです。自炊業者が行っているのは『貸与(26の3)』ではありません。
『複製権(21)』の話だからこそ、『私的使用に伴う複製(30)』の条件が問題になります。

Sonir 2013/10/03 02:12
?貸与によって所有権は移転しない
 
物権変動としては、多くの場合占有権の移転が起こりますが、今回のような店外持ち出し禁止の場合は占有権の移転も起こりません。
(店外持ち出し禁止の場合、著作権法上の貸与にはあたらないとするのが文化庁の見解ですが、民法上では成立します)
したがって、
>「貸与権」による「所有権の(一時)移転」
という論点自体が成立しませんし、占有権を要件とするならば、泥棒でも正当な権利者となってしまいます。

私が行ったのは、店舗の外に持ち出し禁止の場合「所有権の(一時)移転」が「発生しない」事の確認項目です。
『私的使用(30)』の条件に関わるために、「論点」になります。

?「複製主体」が「業者」と判断される場合について
 
ユーザー自らが自炊を行う来店型店舗では、通常の法解釈では業者が複製主体となる事はありませんが、カラオケ法理を適用した場合は自炊業者を複製主体と考えることは可能です。
しかしながら私としては、附則5条の2からカラオケ法理の適用は整合性が取れず、なじまないものと考えます。

以上の通り、ユーザーが来店し、「店舗内の書籍を店舗内で複製」する業態は、《業者=複製者(複製主体)》となるのが現行の法解釈であり、『複製権(21)』の違法です。カラオケ法理がこれ。
この時点で附則5条の2は関係ありません。附則5条の2は『私的使用(30)』にかかるものだからです。

Sonir 2013/10/03 02:12
これを違法としてしまうと、コンビニでコピー取るのも違法となりえますし、附則5条の2を置いた意味がなくなってしまいます。

「ユーザーが来店」し「店舗内の書籍を店舗内で複製」する行為をこの文章に当てはめると

ユーザーがコンビニの本をコンビニコピー機で複写する行為

となります。
これは、今回の話の上では「コンビニの違法行為」になりますが、そもそもコンビニはそのようなコピー機の使われ方を想定していないために、立件されないでしょう。コンビニの本は「販売」のために置いているのであって、「複製原本」のために置いてはいません。
 
これは、ユーザーが本を持ち込んでコンビニでコピーする行為とは違いますし、
ユーザーがコンビニ店員に「これをコピーしておいて」と頼んでどっか行って、適当に時間潰した後で「ありがとう」ともらっていく(自炊代行業)とも違います。
また、「ユーザーが自分で本を持ち込み(コンビニ店員は関与していない)」「ユーザーが自分で複製している」と言うのも重要ですね。
よって「店舗で本を店内のみ条件で貸し出す自炊業態」を考察する参考には、一切関係無いです。

 
その上で附則5条の2と30条を考えますと、すでにリンク先を示した
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/others/detail/1318549.htm
二 技術革新等に伴う著作権法の改正
の通りです。

ユーザーが本を持ち込んでコンビニでコピーする

と言うのは、著作権法30条1項1号(強調は Vid)

(私的使用のための複製)
第三十条  著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
一  公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合

により30条1項の範囲外になります。コンビニのコピー機と言うのは「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」だからです。
同様に音楽や映像を公共に提供されている自動複製機器を用いて「他者が著作権を持つ著作物の複製物を作成する」事は『複製権(21)』の違法行為となります。
これらは「個人が零細に行う複製」であっても違法なのです。
しかし、この「自動複製機器」と言うのが、附則5条の2によって制限がかけられています。

(自動複製機器についての経過措置)
第五条の二  著作権法第三十条第一項第一号及び第百十九条第二項第二号の規定の適用については、当分の間、これらの規定に規定する自動複製機器には、専ら文書又は図画の複製に供するものを含まないものとする。

コンビニのコピー機は「専ら文書又は図画の複製に供するもの」であるために、「他人が著作権を持つ著作物」を『複製(21)』したとしても、それが『私的利用の範囲内(30)』であれば問題が無いとなります。
附則5条の2は「複製機器」の範囲の制限であり、文書や図画の複製の機器であれば問題ないため、自炊代行問題では何一つ持ち出す意味の無い条文です。
 
と言うことで、現在【著作権者に無許可で行っても】違法にならない「自炊」関係の業態は以下の通り。

  • 店舗にスキャナなどを用意しての、時間貸し業態(自動複製機器を設置した場所の提供)
  • 店舗にスキャナなどを用意して、スキャナをレンタルする(自動複製機器の提供)

また、次に、【著作権者に許諾を受けて】行う「自炊」関係の業態は以下の通り。

  • 貸与権の許諾を受けて、裁断済みの本をレンタルする(貸本屋の形態)
  • 複製権の許諾を受けて、店舗内で用意してある本を店舗内で複製する(出版業:この日記で論じている内容)
  • 複製権の許諾を受けて、ユーザーから提供された本を電子書籍化する(出版業:自炊代行業)

今回違法判断出たのも自炊代行業が「許諾を受けていない(禁止されている)」のにやっちゃったのが理由です。
まぁ実際にやるとしても、前二つはおそらく許諾は出ないでしょうね(^^;;