農水省の欺瞞

と言うか、山田大臣の欺瞞だな。

なぜ民間の種牛(種雄牛)6頭を殺処分するのでしょうか?:農林水産省

まず最初の理由として、口蹄疫の防疫措置は、まだ終わっていない、ということがあげられます。
民間の種雄牛6頭は、口蹄疫の発生に伴って宮崎県が設定した児湯地域の移動制限区域内にいます。この移動制限区域内の牛・豚等については感染するおそれがあり、予防的に殺処分(殺処分を前提としたワクチン接種)することを、宮崎県と農林水産省との間で協議をして決めました。この防疫措置により、ウイルスの拡散を防ぎ、他の地域や他県への口蹄疫の拡がりを防ぐことができると、国と県の双方が認識したためです。
同区域内では、口蹄疫にかかった家畜・かかった疑いのある家畜及びワクチン接種した家畜について、殺処分をすすめてきました。現在(7月14日)、この種雄牛6頭の周辺地域の家畜は、すべていなくなっています。しかし、まだ口蹄疫のウイルスを含む可能性のある糞尿が大量に残されているため、新たな発生につながるおそれもあります。同区域内の清浄性を確認して、移動制限の解除をするためには、この種雄牛を含むすべての家畜を殺処分する必要があります。
次に、この防疫措置は、口蹄疫対策特別措置法第6条に基づき、家畜の予防的殺処分を行う地域として指定することについて、宮崎県知事から申請があったものです。申請を受けた農林水産大臣は、口蹄疫のまん延防止のため、同地域において予防的殺処分を行うことが必要と判断し、これを指定しました。知事は予防的殺処分の勧告をされ、この勧告を受けて、当該地域の畜産農家の方々がこれに協力してくださいました。
豚、牛を飼育されていた農家の方々は、大切な家畜たちを、つらい気持ちを抑えて処分することに同意されました。また、地元の関係者の方々、全国から派遣された獣医師や技術者の方々、自衛隊の方々は、家畜の命を奪う悲しみ、暑さや疲労に耐えながら、殺処分や埋却、消毒作業を懸命に実施しました。発生地域の畜産の復興のため、一丸となって予防的殺処分による口蹄疫の撲滅に取り組んできたのです。
このような経緯があることをご理解いただき、民間の種雄牛の殺処分について、皆様にご了解いただきたいと考えています。

http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/taneusi_q_and_a.html

農水省が上げた理由として
・糞尿などに潜むウイルスが居て、これにより罹患する可能性があるため
を主な理由、これに付随して
・移動する事で、感染リスクが高まるため
と言うのを上げている。『だから(予防的)殺処分を』と言うものだ。
 

では、これを頭に入れて、次のニュースを読む。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100717-OYT1T00076.htm

 宮崎県高鍋町で、口蹄疫(こうていえき)対策特別措置法に基づく殺処分を拒否していた種牛農家の薦田(こもだ)長久さん(72)が16日、殺処分を受け入れたことを受け、県は17日午前10時から、種牛6頭を処分する。
 処分後、18日午前0時に高鍋町を中心にした移動・搬出制限区域や、イベントや外出の自粛を求めた非常事態宣言を解除する見通し。残る宮崎市の制限区域解除は27日午前0時を予定している。
 東国原英夫知事は薦田さんとの面会後、「県全体のための英断。心から感謝したい」とした上で、「力及ばず殺処分という結果になり、心からおわびしたい」と薦田さんに陳謝した。国の対応については「最悪。特に農水省の制度や農相にがっかりした。殺処分ありきで、論理が矛盾している」と批判した。
 一方、山田農相は閣議後の記者会見で、処分受け入れについて「本当にありがたい。胸を張ってOIE(国際獣疫事務局)に清浄国と言えると思う。ぜひ薦田さんにお会いして感謝申し上げたい」と話した。
(2010年7月17日00時40分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100717-OYT1T00076.htm

「牛が生きている事」が問題ではなく、「命令に従え」と言うだけの、大臣の満足のためだけの殺処分である事が、見事に示されている。
さて、上で主な理由として
・糞尿に潜むウイルスによって、感染が拡大する可能性があるから、移動制限をかけている
と言うのがあった。
ところが、
・殺処分をすれば即座に移動制限を解除する
と言う。
これは完全に矛盾だ。
これまでの感染の蔓延を見てもわかるように
口蹄疫ウイルスをあちこちに移動させているのは、生きている家畜ではなく、人間の手(車など含む)と思われる
と言うものが多い。特に6月上旬の飛び火など見ると、国道10号沿いで広まっているなど。
また、
・糞尿に潜むウイルスを問題視しているように、種牛を殺処分してもウイルスが即座に死滅する訳ではない
事もすでに農水省が示している。なのに『即座に移動制限解除』と言う。
つまり『種牛の周囲には口蹄疫ウイルスは存在しない』事を理解している。
糞尿は消毒するから? なら、種牛の周囲も消毒すればOKだね。同時に移動制限かけてる領域も消毒して回れば、問題無いね。
糞尿は消毒すれば即時で移動制限に問題無くなるのに、なんで種牛が生きてるだけ(罹患していない)で移動制限なの? そもそも「移動制限」とは何が条件だった?
移動制限解除を認めた。これで完全に論理破綻している。種牛への罹患リスクを過大に見積もり、おそらく今回の感染が広がった主要理由であろう人間の移動は即座に問題無しとリスクを低く見積もっている。
 

移動制限解除が無いと、復旧にが出来ない、と言うのが居た。
つまり、「種牛を殺処分後、即座に別の仔牛、子豚を連れてくる」と言っている。
ここでも矛盾だ。
口蹄疫ウイルスが近隣に蔓延し、感染の可能性があるから、予防的殺処分を行う
といって種牛の殺処分を強行しているのに、
・周囲から家畜が居なくなったら移動制限を解除する
と言う。
『新しく、外部から連れてきた家畜が罹患する可能性』を完全に無視だ。
 

移動制限解除はここが問題だ。
つまり、解除すると言う事は、周囲の消毒はおそらく出来ているだろうと、農水省はそう判断しているのに、≒感染可能性の低いと見積もってる種牛の殺処分を強要しているわけだ。
 

前から言っているのだが、『殺処分』は「ウイルスに罹患した」事が第1の条件だ。なれば「罹患していない」なら殺処分の必要はない。
それを、根拠の無い移動制限を盾に無理矢理殺処分をしろと。殺す正統な理由が無い事を自分たちで宣言しているのに、それでも殺すのを強要している。
 

OIEが清浄国認定に戻るために求める物は『殺処分』ではない。
口蹄疫ウイルスが残っていない事の科学的証明』であり、それは『血清検査』で可能。検査を受けさせないと言う国の態度は言語道断の権力によるハラスメントである(断定)。
また、今回大規模な感染が起こったので、『野生動物に罹患していない』事も同時に証明しなければならない。
『殺処分』以外認めない農水省は、野生の鹿や猪も宮崎県内で発見すれば、全て射殺するのか?
 

このように、農水省の態度は全てが矛盾している。