ホメオパスの誤謬(量子力学編):その3

上のその2のページからリンクがあった。
はっきりいって、「酷い」の一言。
なのであえて取り上げる。

量子力学
量子力学入門:原子内部の法則
これを読んでも量子力学は全く理解できない。
どころか、ホメオパスがここをリンクしてる理由がよくわかった。

間違い1

水素と鉄とカルシウムは、どう考えても同じ部品からできているとは思えません。 しかし、それは原子よりも大きい世界での常識です。 原子の内側に入った途端、それまで「質」の違いと信じていたものが、「量」の違いに姿を変えてしまいます。
 
原子より内側と外側には、全く異なる2つの世界があります。 この境目の壁はとても大きく、一方の常識は他方に通用しません。 当然、物理法則も全く違います。通常の物理学が通用しない、原子の内側の物理学が、量子力学です。
 
原子の部品が電子です。 同じ電子なのに、それがいくつ結びつくかの差だけで、あらゆる種類の原子を作れます。 このような特異な性質をもった部品のことを「量子」と呼びます。 その「量子」の物理法則なので、「量子力学」といいます。

全然違う。
量子力学」とは原子の内部と外部の学問ではない。
量子力学」とは、不確定性原理と光量子仮説に代表される、微視的現象を『説明する』ための論理であって、原子の内部、外部は関係ない。
事実として、先にあげた「フラーレンを用いた二重スリット実験」も「量子力学」で説明できる範囲である。これは「分子」=「原子の外側」の物質を用いた現象である。
 
量子力学を「電子の量」としているのがそもそもの間違いで、量子力学の「量子」とは、黒体放射のスペクトル分布や太陽光のスペクトルの黒い線、また電子の軌道などをを計算する場合、その値が「なだらかな分布」を取らず「飛び飛びの値が現れる」事から来ている。
この「量子化」と言う概念が関わる現象と理論をまとめたものが「量子力学」であって、「電子の量」から来たものではない。
 

この時点で、根本的に間違えている。

間違い2

物理の世界で先に発見されたため、量子力学という名前になっていますが、実は、もっと広い、「状態の世界」のメカニズムです。 人間の意識の世界や、抽象概念の構造可視化など、新しい世界に踏み込むヒントが隠れています。

明らかに違う。
なるほど、こんな説明を信じてるから、量子力学をオカルトに使う馬鹿が出るわけか。

間違い3

「状態」を正しく扱うためには、「モノ」の場合とは異なる数理が必要になります。もし、電子がモノなら、「林檎を2つ集めてミカンになる」ようなことは起こり得ません。電子は、実はモノでなくて、「状態」なのです。 ですから、その電子の数が増えるというのは「状態」そのものが変化することなのです。 これが、「電子が1つなら水素、2つだとヘリウム、3つでリチウム」という、あの不思議な現象のからくりです。

原子についても完全なる勘違いをしている。
「電子が1個の『状態』」、「電子が2個の『状態』」、「電子が3個の『状態』」が原子の性質を決めているわけではない。
この説明の延長でヘリウム(電子2個)、ネオン(同10個)、アルゴン(18)と言ったものの説明がつくと?
 

問題なのは、これ中途半端には合ってるって事なんだよなぁ。
ただ、「化学」のレベルの話であって、「量子力学」は不要なんだよね。それを「量子力学の世界の話です」なんてやってるのが完全な間違いなわけで。

間違い4

量子力学は、単に「モノより小さい世界」だけでなくて、より広く「モノ以外の存在」を扱う能力を備えています。 モノ以外の「状態の世界」全般の新しい科学です。 モノよりも「概念」が中心になることが多い文系とは、意外な親和性があります。
 
ウエーブの左右方向の動きが、多数の上下の動きの間の「関係性」から生じるように、「ブランド」や「経営戦略」も多数の抽象概念との間の「関係性」として成立するものです。 これらは、統計数理よりも、量子数理で扱うのに適したものといえます。
 
文系でも、物価上昇率や、ブランド認知度など、様々な数理を利用してきました。
しかし、それらは「モノの世界の数理」を、概念の世界にあてはめるやり方でした。
 
概念に数値を割り当てるような方法とは決別し、「ブランド」や「経営戦略」のような抽象概念を、そのまま「量子系」として扱ってみることで、新しい世界が拓けます。

『完全に間違い』と言える。
量子力学は先も出したような微視的現象であって、これ以上の記述能力は事実上「持たない」。
更に、「ブランド」とか「経営戦略」とかの概念のと「関係性」なんか全く無い。
なるほど、だから「ホメオパシー」が『人間の精神が関係する』と言うのはここからか、だよ。
だが、そもそも「量子力学」はそんなものを相手にした学問ではない。

間違い5

原子の内側にあるものは、「部品」ではなくて、「量子」です。
量子とは、単に「小さい」だけではなくて、原子より大きい世界に存在する「物質」とは振る舞いが異なります。 電子は「量子」なので、「電子1個だと水素、2個ならヘリウム・・」という、物質の世界では起こらないような現象が生じます。

電子0個の水素は?

間違い6

電子は波のような「波動性」を持っています。ただし「何かの波」ではなくて「波だけ」です。 そこで、その波の形を調べよう、ということになります。
 
電子が、どのような形の波動になっているのか、それを数学の関数の形で記述したものを「波動関数」と呼びます。
 
電子は「波だけ」ですから、その波の状態を表す「波動関数」がわかれば、「電子」を理解できるはずです。
 
波動関数を知るためには、波動方程式という名前の方程式を解く必要があります。 これを解くと、その答えとして波動関数が得られます。

波動関数を「電子の波」と勘違いしている。
これが『量子力学を理解していない』と言う決定的証拠である。
波動関数複素関数であるため、これを解いたところで現実的な解『とは言えない』。
実際には波動関数の2乗が重要で、これが「量子の分布確率」を示す関数となる。(実際には規格化が必要である)
更に言えば、「電子」を理解するにはこれを〜と言うのもおかしな話で、『物質の性質』については「化学」レベルの「電子」の知識があればよく、『物質の性質』とは全てこのレベルで決まる。「量子力学」を理解する必要は無い。
 

確かに波動関数は物体の「状態」を表すとは言えるが、それはここで考えられているような「波と言う状態」の話ではない。

間違い7

量子力学入門:波動方程式とは何か?
致命的です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BA%E6%9C%89%E7%8A%B6%E6%85%8B

一番致命的なのは

固有状態は本質を表します。固有状態である波動関数は電子の本質を表します。 固有状態になれないような関数は、電子の波動関数ではありません。
 
一言でいえば、「固有状態である波動関数を探すのが量子力学」なのです。

これですね。
量子力学は別に「固有状態」を決め付けるものではない。
 

この間違いが端的に現れてるのが次のページ
量子力学入門:因果関係を越えて

ところが、固有状態というのは、原因(入力)と結果(出力)が一致する状態です。
これは、「因果関係」という枠組からみると、想定外の事態です。
 
(図:コピペできないので略)
 
しかし、これが「量子の世界」の原則です。 原子の外側では「原因→法則→結果」があたりまえですが、原子より内側には、それと異なる世界が存在します。

これ。図はコピペ出来ないので見てください。
はっきり言って「馬鹿」です。量子力学の何たるかを、これっぽっちも理解していない。 

固有状態になるのは、『特定の作用素』を用いた場合の話であって、これは量子コンピュータにおけるqビットの操作の話の方向の話。
原因と結果が同じ事を指す『のでは無い』。
そもそも固有状態と言うのは、原因Aと結果aが常に同じと言う「作用素(|ψ>)である波動関数」を指す。
 

第一、原因と結果が「一致する状態」は想定外でもなんでもない。全く不思議な話ではない。

間違い8

モノとは違って、抽象概念については、それが「原因」なのか「結果」なのかさえ、判然としないことも多いものです。 そもそも「抽象概念」というものは、多数の概念との関係性の強弱が生み出す「波」のようなものです。 さらに、それが物質の波動ではない点でも、「量子」と似たところがあります。
 
量子力学」と「抽象概念」には、親和性が存在します。
抽象概念を「量子系」と捉えて、量子力学系の数理を、そのまま応用できます。
 
量子力学は、文系にも革新をもたらすものです。

いよいよオカルトになりました。
で、途中はもういいや。

これまでの各項目をまとめると、次のように要約できます。
 
世の中のすべてが「原因→法則→結果」の図式に従っているわけではなくて、
「固有状態→作用素→固有状態」という形式の系も存在するということです。
 
そして、固有状態は作用素の本質を表します。 作用素自体ではなくて、作用素の「本質」を表すというところが重要です。
 
原子より内側の量子の振る舞いを規定する「波動関数」は、ちょうど、この固有状態となっています。 そして量子の世界の本質を表す最も重要な関数です。
 
「原因→法則→結果」の図式では説明できなかった量子の世界のミステリーは、
量子を、「モノ」としてではなくて、「状態」と考えることで解決されます。
 
概念(コンセプト)も「モノ」ではありません。
それなら、「固有状態→作用素→固有状態」の量子数理を、概念の世界にも、そのまま適用できるのではないか、というアイデアが生まれます。
量子系の固有状態として、抽象(コンセプト)の本質を可視化する方法です。
 
量子数理は、単に「原子より小さい物理の世界の法則」ではなくて、
より広く、モノ以外の、状態全般の法則であると考えてみるのです。
 
電子は「モノ」ではない、だから、モノのように因果法則には従わない。
電子の波動関数を知るには、因果法則とは異なる「量子数理」が必要でした。
 
 
「概念」というのも、「モノ」ではないという点で、電子と共通点がある。
ならば、量子数理を、概念の世界にも適用することができるのかもしれない。
・・・ということです。 

量子数理を概念の世界にもそのまま適用できるのではないか、と言うアイデア自体が間違いです。
 

量子力学と言うものの説明能力は「微視的現象」です。『人間の認識』は十分すぎる『マクロ』レベルです。
もちろん、出来ないわけじゃないですよ。野球のボールそれ自体を「量子」として、物質波の計算を波動関数を用いて行うことも可能です。しかしそこから出てくる数字をマトモに観測できるレベルにはならない。
理由は簡単です。重たすぎるから。
量子力学でのトンネル効果を考えれば、壁すり抜けも可能に見えます。しかし現実には起きない。確率的に不可能ですから。
 

それぞれの理論に向き、不向きと言うのは厳然と存在します。

これ……

で。
量子力学
ここ全体が、量子力学がよくわからないのをネタに、「文系分野に量子数理(なんだこの造語は)を当てはめよう!」と言うサイトだったりする。
固有状態の計算方法
そしてこれなんか、GooglePageRank の考え方そのもの。
ページランク - Wikipedia
これを

このような堂々めぐりを含む式を、「固有方程式」といいます。
固有方程式は量子力学の中核ともいえるほど、頻繁に登場する方程式です。

なんて言ってる。


 

間違った説明を理由に「ホメオパシーには量子効果での医療効果がある」って、本気で馬鹿だとしか言いようが無いわ。使われるほうも、使うほうも。