著作権法を解釈する

参考にした法令提供サイト
http://www.cric.or.jp/db/article/a1.html
法令の転載については

(権利の目的とならない著作物)
十三条 次の各号のいずれかに該当する著作物は、この章の規定による権利の目的となることができない。
  一 憲法その他の法令

と言うことなので、特に引用条件を満たさずに転載しています。
予めご了承ください。
 
また、指摘については、Twitter のメッセージの順番とは前後させます。これは、どこの何が問題なのか?を順番に明らかにするためです。

店内で裁断本を借りる行為の解釈

http://twitter.com/jisuinomori/status/19076763627823104

また、店内で本を来店者にアクセスさせる行為は、あくまで閲覧行為であって、これもまた著作権法上の貸与権条項には抵触しないのです。店から本を持ち出してはじめて貸与となります。
2:07 AM Dec 27th webから
jisuinomori

http://twitter.com/jisuinomori/status/19076763627823104

これは正しい。
まんがの著作権者らが「まんが喫茶」など、店内にのみ持ち出せる形態でまんがの閲覧をさせる店舗に対して、まんがの著作権を侵害しているため、「貸与権」をまんがにも認めろ、と言うロビー活動を行いました。
その時に文化庁が出した答えとして、「まんが喫茶は店外に著作物を持ち出してはいないために『貸与』と判断するのは難しい」と言うものです。
その後、貸与権がまんがなどにも認められることになりましたが、これは貸し本業に対してのみ使用料を請求と言う形になっており、まんが喫茶などからの料金徴収は現状でも論拠となる法律が無いので、行われていません。
 

ここで重要なことですが、「占有権(独占的に使用する権利)の移転が行われていない」ために、「貸与権」が与えられなかったという判断が重要です。
これは、後で私が「違法だ」と断定する論拠の一つとなります。

公衆の自動複製装置の解釈

http://twitter.com/jisuinomori/status/19077191232913408

少し著作権に詳しい人ならば、「公衆の自動複製装置を用いた複製は私的複製にあたらないのでは?」という質問が来るかもしれませんので、それに対しても予めコメント致します。
2:08 AM Dec 27th webから
jisuinomori

http://twitter.com/jisuinomori/status/19077191232913408

http://twitter.com/jisuinomori/status/19078686099644417

著作権法 第5条の2 にて、文書または図画の複製に供するものを含まないとする、と記載されています。簡単に言えば、音楽や動画では公衆の自動複製装置を用いた複製は私的複製ではないと定められていますが、書籍の場合はその限りでは無いという事です。
2:14 AM Dec 27th webから
jisuinomori

http://twitter.com/jisuinomori/status/19078686099644417

これですが、「著作権法 第5条の2」ではなく、
著作権法 附 則(抄)」

(自動複製機器についての経過措置)
第五条の二 著作権法第三十条第一項第一号及び第百十九条第二項第二号の規定の適用については、当分の間、これらの規定に規定する自動複製機器には、専ら文書又は図画の複製に供するものを含まないものとする。
(昭五九法四六・追加、平四法一〇六・一部改正、平十一法七七・一部改正、平十八法一二一・一部改正)

です。
 
次に、問題としているのが著作権の30条ですので、これを転載します。

(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
  一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合
  二 技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合
  三 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であつて、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合

2項については、録音録画の権利なので省きます。
確かに、著作物の複製について、図書・文書・図画の複製機器は「私的複製の権利外になる機器」の「対象外」とされています。
よって、書籍のコピー用にスキャナを提供することは、「私的複製の権利外となる機器」『ではない』ため、「公衆に供することが問題ではない」と言う主張は、確かに正しいと解釈するしかないでしょう。

30条の解釈

しかし、問題はその前にあります。
著作権30条の「私的複製」は、その「著作物の利用」において

  • 個人的、または家庭内、その他これに順ずる限られた範囲においての使用

としての複製が認められているに過ぎません。
今回の場合の問題点はまずここにあって、

  • 閲覧の許諾時に「占有権」の移転が行われていないので、「私的複製の物体」は「店の利用」として判断しなくてはならない
  • 閲覧の許諾としてお金を取るため、「個人的な利用」ではない(営利を目的とする事業)
  • いくつかの過去判例より「その他の順ずる範囲」としては、お互いの家に上がる程度には信頼のある友人であり(1)、またその人数は6〜7人ぐらいであること(2)と言う判断になっている。今回の場合は明らかに不特定多数である

と言った部分で完全に私的利用の範囲を逸脱しており、この時点で30条の著作権の権利者の制限範囲外の行為となっております。

私的複製の解釈

もう一つ、間違いを指摘します。

http://twitter.com/jisuinomori/status/19076129025425408

これは良くある誤解なのですが、私的複製をする為の条件としてオリジナルの本を自分で買う必要は無いのです。例えば、図書館内で設置されているコピー機を使って複製する行為も、友人から書籍を借りて複製する行為も法的に全く問題有りません。著作権法第三十条に定得られている私的複製です。
2:04 AM Dec 27th webから
jisuinomori

http://twitter.com/jisuinomori/status/19076129025425408

図書館での複製ですが、これは「私的複製(30条)」としての著作権権利者の制限ではありません。
図書館は31条の別の権利です。

(図書館等における複製)
第三十一条 国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(以下この項において「図書館等」という。)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(以下この条において「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。
  一 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物にあつては、その全部)の複製物を一人につき一部提供する場合
  二 図書館資料の保存のため必要がある場合
  三 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料の複製物を提供する場合
2 前項各号に掲げる場合のほか、国立国会図書館においては、図書館資料の原本を公衆の利用に供することによるその滅失、損傷又は汚損を避けるため、当該原本に代えて公衆の利用に供するための電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第三十三条の二第四項において同じ。)を作成する場合には、必要と認められる限度において、当該図書館資料に係る著作物を記録媒体に記録することができる。
(平二一法五三・1項一部改正2項追加)

重要なのは、「営利を目的としない事業」であることです。
この時点で、図書館を例にするのは不適当です。
 

また「友人から借りたものの複製行為」ですが、先に述べた通り『「営利を目的としない」事』『お互いの家に行く程度には信頼があること』『(一時的だとしても)占有権の移転があること』などが判断基準となっているために、私的複製の範囲とは認められません。

まとめ

以上により、この商売は著作権法的に見て「違法である」と『私は』判断します。

おまけ

http://twitter.com/jisuinomori/status/19079066845974528

これについては、知的財産権に詳しい弁護士に事前に相談した上での見解です。少し長くなりましたが、コンプライアンス的には、店内の書籍を利用者が店内で自分の体を使って複製する事については、問題無いという認識です。
2:16 AM Dec 27th webから
jisuinomori

http://twitter.com/jisuinomori/status/19079066845974528

弁護士が間違っている可能性は常にあります。
したがって、弁護士と違う答えを出したとしても全く問題は無いと考えます。