ソーシャルゲームのゲーム論(ってのをやりたいなーと)
『怪盗ロワイヤル』が流行った理由、面白い理由 - Togetter
での?Bコメントをつらつら。
その中でPBM系の系譜(雑誌の読参の系譜じゃ?)と言うのがあって、それは違うと感じたのが、書こうという発端。
一応、自分の?Bコメでも書いたけど、ちょっと足りないので、改めて日記に起こす。
とは言うものの
私はガラケー側のゲームは知りません。
単純にガラケーを持ってない……いや、違うな。ガラケーでは遊んでないと言うのが近いか。画面が小さすぎて、趣味にあわんのですよ(^^;;
で、代わりにと言うわけじゃないですが、mixi アプリにははまってるので、こちら基準で話すことになります。若干の違いが出るかもしれませんが、そこはご了承ください。
ソーシャルゲームの分類と系譜
?Bを見て。ソーシャルゲームの分類を「ロワイヤル系」「農場系」「ギルドバトル系」と言うのがあって。ちょっと調べてみた。
ロワイヤル系ってのは、「アクションコスト」が時間でたまって、これを消費して行動を起こすというもの。
農場系ってのは、作物が育つ時間がリアルタイムに直結して、これが待ち時間になってるもの。
ギルドバトル系ってのは、要するに戦争物のようだ。ブラウザ三国志が有名かな。
で。とりあえずロワイヤルだけ見るけど、これを「PBM の系譜」としてるのを「違う」と言うのは『時間』の扱いが決定的に違うため。PBM の系譜は全て「更新が同期している」と言うのが重要で、いわばアクションコストは必ず一定時間で消費するという形になってる。一番近いのは「誰にとっても1日は 86400 秒しか無い」と言う物。『絶対に消費しなければならない(消費させられる)』と言う意味で、前述のソーシャルゲームとは違うと感じている。大きな断絶がある。
では何の系譜なのか?
基本的にはどれも既存にあるゲームシステムの系譜で、「リアルタイム(時間)」と「アクションコスト」の取り方を既存と変化をつけたに過ぎない。ことさら〜系としているのは、リアルタイムが絡んだために、味付けが違うように感じているだけ。
アクションコストのウェイトのつけ方
ここからシステムの系譜として「アクションコスト」の使い方を見ていく。
アクションコストが時間と共に増加していき、これを減らして行動するというのは、べつに珍しいシステムではない。
格闘ゲーム(2D・3D問わない)/あるいはアクションゲームの必殺技システム(時間ではなく、ダメージを基準に増加。必殺技と引き換えに減少)。これはペナルティではなく、特殊行動と言う実装になっている。
アクションゲームの「スタミナ」。モンハンシリーズがそのまんま。「失うと行動制限となる」と言う意味でロワイヤルと似ている。
MMORPG に良く見られる「MP」。休憩すると(時間を使うと)回復する。特殊アイテムでも OK と言うところは非常によく似ているといえる。
シミュレーションゲームでは、牧場物語などが「HP」「体力」と言う形でこれを消費して行動を起こすなどもある。
基本的に行動を起こすときに「なんらかのポイントを消費する(アクションコスト)」と言うルールを採用することは珍しいものではない。
PBM は違うと言うのは、このような「アクションコスト」の概念ではないからだ。この概念の違いは「同期」と「非同期」と言うシステムの違いの大きな部分となる。
ちなみに、ボードゲームの多くは「同期」である。サイコロを振る回数、コマ・石を打つ・指す回数などは基本的に全員同じ回数であり、差は生まれない。さまざまな理由より「制限時間」と言うルールが加わることがあるが、これはゲームルールから来たものではなく、人間の運用ルールから来たという違いがある。
アクションコストの払う方法
その上で、今度はこのアクションコストの払い方を見る。
先の段に上げたアクションコストは、意図的に「アクションコストを貯める」「貯めたアクションコストを払う」と言う物を取り上げた。
払い方と言うのはもう一つあって、これはアクションコストと言うよりリソース制限ルールに属するのかもしれないが、「コストを借金として背負う」「コストの借金を払うまで行動制限される」と言う形がある。この形は、シミュレーションゲームでよく見られる。
農場系ゲームと言うのは、概ねこちらの形を取る。「農作物を植える」「育つまで待つ」と言う形で、前述のものが「プラスからの消費」なら、こちらは「マイナスの返済」と言う形だ。
コンシューマで出すと、牧場物語での作物も同じ形を取る。こちらは「マイナスの返済」の方法が「日付を進める」と言うものであるため。
シミュレーション以外でもこれらの「マイナスの返済」と言う概念は取り入れられており、「必殺技の後の硬直」「スタミナ切れのあとの回復までの行動制限」などはこれの変種と見ることが出来る。
先のモンハンのとかぶっているように見えるが「新規行動できない」と言うのが「コストが0になったため」の部分。一方で「現在の行動にペナルティになっている」と言うのが「マイナスからの回復」部分。このエフェクトが同時に発生しているために分類として見えにくいが、「能動行動可能・不可能」と「通常行動への制限」と言うところで別のものとしてゲームデザインは考えるべきだと、私は考えている。
コスト=行動
このように、「非同期」のゲームでは「コスト」と「行動」がセットになっており、この「コストの入手方法」でゲームの味付けが変わる。
そこで、ソーシャルゲームはこの「コストの入手方法」と言うものを「『比較的長め(1分から1時間など)の時間の経過」としており、またこの部分で「コストを売る」ことで、収益の方法の一つとしている。
(コンシューマではここが1秒単位。MMORPGでは5秒から10秒単位など。或いは『ゲーム内時間の経過』と言うものもある。Wiz の宿屋、牧物の1日経過など)
で、頭に戻るが、現在この系譜。ガラケーでは
- ロワイヤル系
- 農場系
- 戦争系(ギルドバトル系)
とあるけど、それぞれ
- ロワイヤル系
- アクションコストを消費する
- 農場系
- コストの借金を返済する
- 戦争系
- コストの借金を基本としながら、能動行動を別のコスト消費で行う
と言う味付けをしている。
後は、何をフレーバーとして皮をかぶせるかの問題となる。
ちなみに、どこかで突っ込まれる前に書いておくが、育成系は農場系の亜種である。
系譜として
ガラケー、SNS が普及した関係でこれらのゲームが多くの人に遊ばれることになったが、以前からこのような物が無かったわけではない。
フリーとして一番流行ったと思われるのは、おそらく箱庭諸島が一番広まったと思われる。これは CGI のゲームで、いろんな遊び方が出来るが、「コストが時間」と言う意味で一番近い。
一応はターン制ではあるが6時間1ターン(無改造のデフォルト)と、それまでのゲームと比べると比較的短い時間だったり、20ターンの予約が出来るというのが大きい。PBM は1ターンが一週間で、行動予約は出来ない。いわば、箱庭諸島は「アクションコストMAX20、回復1ポイント/6時間」なのに対して、PBM などは「アクションコストMAX1、回復1ポイント/一週間(とか一ヶ月とか)」となってる。
このようなところからもコスト=ターン=時間と言う概念がかなり近づいているという意味で、箱庭諸島は系譜の一つとして上げられると考える。
ここら辺りが「同期」「非同期」の分かれ目で、PBM の系譜を指す方はこの流れを指しているんだと思われるが、箱庭諸島は「行動予約」があるため決定的に分かれたと私は考える。
もう少し砕くと、実際に起こす「行動」と「コスト」の関係が、PBM の系譜は「『全員』『必ず1行動』」なのに対して、非同期系は「ある程度の行動をまとめて登録できる。登録は人によって自由」と言う部分が決定的な違いになっている。
PBM から派生したということは出来るが、ゲーム性が PBM の系譜の先と言うのは違和感がある。大きな断絶が生まれたと見るべきではないかと。
ちなみに。他にも、行動させると時間が必要な奇妙な動物を育てるゲームとかあったんですが(エサやりとか、冒険行動させるとかあった)、名前忘れた(^^;; 無名だし、面白くなかったからなぁ……10年は前ですが。
レベルデザインの問題
それで、ゲームが『面白い』というのはむしろこちらの問題になる。
(続き)『怪盗ロワイヤル』でちょっと驚いた仕様。この手のゲームって、「放置」が必要になるのだけど、このゲームでは最初のボスを倒すあたりまではLvUPによる回復でノンストップ進行できるのよね。そしてその間、金が溜まり、宝はゲットし、ミッションマスターし…、(続く)R_Nikaido
『怪盗ロワイヤル』が流行った理由、面白い理由 - Togetter
2011-05-16 21:06:07
(続き)で、最初ボスを倒したあたりで初めて「待ち時間」が発生するのだけど、その時点で既に収集・成長要素のうまみを堪能してるからもう虜になってる。既に次行動出来るタイミングが待ち遠しくなってるわけだ。これでもう捕らえたも同然。『怪盗ロワイヤル』は一番重要な「導入」が凄く上手い!R_Nikaido
2011-05-16 21:09:38
これは「ゲームシステム」(ゲームデザイン)の問題ではなく「レベルデザイン」の問題である。
フレーバーとして「怪盗」と言う題材は問題ではなく、
- アクションコストがレベルアップによって回復する
- その回復とレベルアップが特定レベルまではちょうどつりあう形でレベルデザインしている
- 一通りの操作と『出来ること』を「提示」「体感」させている
- 最初のボスを倒すところで、脳内でおさらいできる量にしている
と言うデザインが上手いということになる。
言葉を借りてくるが、コスティキャンのゲーム論 に示される「意思決定」のための
- 目標
- 障害物
- 資源管理
- 情報
のバランスがちょうど良いということが、『面白い』につながっている。
これらは全てレベルデザインの問題であって、ゲームシステムが問題の主因ではないと考えられる。
とりあえずまとめ
こうしてみていくと、ソーシャルゲームで決定的に違うのは
「アクションコスト」(コスティキャンの言う資源管理の中の資源の一つ)に『時間』が決定的事項となっている
と言う部分以外は、実は既存のゲームとなんら違いは無い。
そこで「ソーシャル」と言うものが重要になってくるのだが、面倒になったし、「やりたいなー」程度だし、どーせ読む人もいないんだから、ここまでで書き投げて見るテスト。
余談
ちなみに、『面白い』は、「ゲーム」の話ではなく「遊び」の話なので、実はこれまた別の章立てになります。カイヨワの方向。これ知らない人は、多分わけわからん方向の話になりかねないので、続きを望む人は注意してください。